【ブタゲノム研究の全体像】

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ブタゲノム研究とはなんでしょうか?

 ゲノム研究というのはゲノム(個体・種の性質を決定する遺伝情報のまとまり)を構成する遺伝子の構造や機能を解明することです。ブタはわが国でもっとも肉消費量の多い家畜です。ブタのゲノム研究から得られる情報は、産肉性や肉質などが優れたブタの選抜育種に貢献するとともに、体細胞クローン技術やトランスジェニック技術などと組み合わせることで、新しい産業の創出に貢献することができます。

ブタゲノム研究の経過と今後目指すものとは?

 ブタは、良質な食肉を生産する家畜としてなじみのある動物です。これまでにDNAマーカーの開発や発現遺伝子の解析などの基盤情報が蓄積してきています。ブタのゲノム研究から得られる遺伝子情報を、現在急速に進展している体細胞クローン技術やトランスジェニック技術などと組み合わせることで、新しい実験モデル動物の提供や、有用物質の生産など、新たな産業の創出にも寄与することができます。

ブタゲノム研究とはどのような内容なのですか?

 ブタゲノム研究は大きく分けてゲノムの構造解析とゲノムの機能解明に分けられます。染色体上での遺伝子の特定と塩基配列解析を行い、さらにそれら遺伝子の発現パターンを明らかにすることで、生命現象を正確に理解し、生物資源の有効な利用を図ることができるのです。

家系分析による有用形質の解析

 染色体上に配置されたDNAマーカーを用いて、ブタのいろいろな形質(肉質、生産性など)とそれを支配する染色体領域の位置の関係を突き止め、原因となる遺伝子の特定を目指します。

有用遺伝子の単離とゲノム構造の解明

 ブタの多くの有用遺伝子、特に生産性、抗病性、生物資源としての利用(再生医療・臓器移植・動物工場)において重要な遺伝子について、その詳細な構造を明らかにし、遺伝子発現調節や遺伝子改変のための基盤を提供します。

発現遺伝子の網羅的収集

 ブタの各組織で発現している遺伝子の情報を、網羅的に収集し、いろいろな形質の原因となっている遺伝子の機能を探索するためマイクロアレイ等の遺伝子発現解析のツールの開発を行います。

発現遺伝子の機能解明

実際に発現している遺伝子の完全な構造を明らかにし、遺伝子の正確な機能について明らかにし、ブタの生物資源としての有効な活用を目指します。

ブタゲノム研究で得られた成果はどう役立つのですか?

 ブタゲノム研究は大きく分けてゲノムの構造解析とゲノムの機能解明に分けられます。染色体上での遺伝子の特定と塩基配列解析を行い、さらにそれら遺伝子の発現パターンを明らかにすることで、生命現象を正確に理解し、生物資源の有効な利用を図ることができるのです。

高品質な畜産物生産

【マーカーアシスト選抜】
 畜産物の品質に影響する(肉質・生産性・抗病性など)染色体の上の遺伝子の位置を特定し、DNAマーカーを利用した効率的な選抜を行い、優秀な家畜の生産を目指します。

【家畜感染症の克服】
 遺伝子発現解析による新規診断技術の開発や、抗病性に関する遺伝子の解析により、我が国でも脅威となっている口蹄疫やプリオン病(狂牛病などを含む)などの家畜伝染病の克服に貢献します。

生命科学研究

【新しい実験モデル動物の提供】
ブタのヒトとの生理機能や臓器サイズの近さ、繁殖性の高さ、遺伝子情報の蓄積、遺伝子改変技術の急速な進展から、新たな実験モデル動物としてのブタの利用が期待されています。ブタゲノム研究による遺伝子の構造や機能の解明により、高血圧などの生活習慣病や、自己免疫疾患などの難病のモデル動物が作出され、治療法の開発に役立てることができます。

生物資源の高度利用

【有用物質の生産】
ゲノム構造・ゲノム機能の解析を基礎として、遺伝子発現制御技術、遺伝子導入技術の開発を行い、有用物質の生産を動物で行わせる(動物工場)ことで、新産業の創出に貢献します。

【移植医療・再生医療への貢献】
異種間臓器移植のドナー動物としてブタは非常に注目されています。またヒトの臓器を再生する媒体としても期待されています。これらの利用に適したブタを、ゲノム解析から得られた情報を生かして遺伝子改変技術を用いて作出し、ヒトの医療に貢献します。